退職39日目
21:30発の夜行バスに乗る。
21時半までまだ時間はあるけど、どんどん迫ってくる。
今日の全てが21時半に支配されているような気分になりソワソワする。ソファに寝転び、水槽に漂う魚を眺める。すみっこの砂が流れて、底がみえている。死ぬまでずっと四角いガラスの中に閉じ込められていることを魚達は知っていて泳いでいるのだろうか。
東京は久しぶりだ。雨が降るという。
旧友に会いに行くのに暗い気分になっているのは、ずっと一緒にいる恋人と離れるのが寂しいからだと思う。
ずっと一生恋人の隣で安心して目覚めて安心して寝たい。いつのまにか日常を愛してしまっていた。
時間が迫ってくる感覚で心臓が速くなる。ソワソワするのに気だるい。
以前は何も臆することなくどこへだって旅に行けた。若かったんだ、と思いたくないのに自覚してしまう。
恋人と一緒に行けたなら、と想像する。
手を繋いだら、何の不安も恐れもなくすやすやと眠ってしまうのだろう。まだ離れてもないのに人肌が恋しい。